2010年に西尾演出で日暮里d-倉庫にて初演を行った『乳水(にゅうすい)』を、三浦雨林による新演出で、ストレンジシード静岡2020に参加して上演した。本作は、米カリフォルニア州で実際にあった女性誘拐監禁事件を題材にしており、誘拐監禁犯の夫婦、誘拐監禁された娘、その娘と誘拐監禁犯の夫との間に生まれた姉と弟、この家族の元を訪れた来訪者の6人の登場人物が、芥川龍之介『藪の中』のようにそれぞれの視点から、それぞれに見えた物語を語っていく。
三浦はこの語りの形式を活かして、登場人物一人ひとりのインタビューを映像および音声化し、タブレットやスマートフォン、ラジカセといった家電製品から流れるようにしてインスタレーション的に空間を構成した。観客は登場人物たちに語り掛けられることで作中の「来訪者」として作品に取り込まれ、緑が多く晴れやかな静岡市役所前の噴水広場に、歪で不穏なある家族の物語がインストールされた。生身の俳優が登場せず、感染症対策の面でも配慮された作品となった。
開催概要
出演=大竹直(青年団)
杉山賢(隣屋)
高橋星音
ながいさやこ(SPAC)
坊薗初菜(青年団)
作=西尾佳織
演出=三浦雨林
空間デザイン・グラフィック=鈴木哲生
空間デザイン・映像協力=山田沙奈恵
オブジェ制作=永瀬泰生(隣屋)
助成=セゾン文化財団