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Works

「からゆきさん」プロジェクト なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか(仮)

継続中
「からゆきさん」プロジェクト なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか(仮)

「からゆきさん」プロジェクト なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか(仮)

継続中

2018年より劇作家、演出家、鳥公園主宰の西尾佳織は、「からゆきさん」のリサーチ~創作に取り組んできた。からゆきさんというのは、明治初期~昭和初期にかけて海を渡り、東南アジアを中心に世界中の様々な土地で娼館勤めをした日本人女性である。その多くは人身売買に巻き込まれる形で、本人の意志に反してからゆきにさせられたが、同時にその大元には「海を越えて自分の力で生きられるかもしれない、故郷の人々の力にもなれるかもしれない」と願う少女たちの野心や優しさがあっただろう。また、彼女たちが(本人の意志とは無関係に)日本の帝国主義によるアジア侵略の先兵の役割を果たすことになってしまったことも、忘れてはいけない。
2020年の西尾の出産以降、本プロジェクトはしばし休止状態にあったが、2025年より再始動する。2025年度は、5月末~7月にドラマトゥルクと俳優とともに稽古場を持ちながら戯曲を執筆し、7月末の試読会と12月のYPAMでのリーディング上演を経て、戯曲の完成を目指す。2026年度以降は、完成した戯曲から上演を立ち上げ、まずは日本、そしてゆくゆく韓国・マレーシア・シンガポールでも公演をしていきたいと思っている。
本プロジェクトの特徴は、「上演のため」ではなく「戯曲執筆のため」に劇作家とドラマトゥルクと俳優のチームをつくり、上演に従属した上演台本ではなく「独立した作品」としての戯曲の執筆を行おうとする点だ。一般的に作家の孤独な創作に任せられがちな戯曲執筆を、複数の異なる専門性からなるチームで進める。これは、作・演出という本来であれば全く別ものであるはずの職能を一人の個人において癒着させ、創作現場における権力・責任の一極集中を招く構造の組み換えにもつながり得る試みになると思う。
作品の初めの形態が作家自身のリサーチ経験を踏まえて構成されたレクチャーパフォーマンスだったこともあり、これまでにつくられた3バージョンの上演はいずれも、歴史的事実や書籍からの引用、作家自身の実体験を多く含んだものだった。しかし今回のクリエイションでは、あり得たかもしれない一人のからゆきさんのキャラクターをフィクショナルに構築することを目指す。つまり、これまでの過程は踏まえつつ、基本的には全編新作として執筆する。

プロジェクト予定

2025年7月末 試読会(クローズド、一般公開なし)
2025年12月2週目 リーディング公演@横浜(公開)

スタッフ

作|西尾佳織
ドラマトゥルク|萩庭真
戯曲執筆協力|和田華子(青年団)、稲継美保

 

鳥公園お盆部
マネジメント|奥田安奈
会計|五藤真
宣伝美術|鈴木哲生

 

助成|公益財団法人セゾン文化財団
主催|鳥公園